「コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー」キャシー・クレイマン(著) 羽田 昭裕 (翻訳)
世界初のプログラム内蔵式コンピュータである「ENIAC(エニアック)」の最初のプログラマーである6人の女性について書かれた本。 ENIAC6と呼ばれる彼女らは当時のパブリックな写真には写っているけど、名前や何をしていた人たちなのかについては、まったく情報がなく、歴史のなかで埋もれてしまっていたのですが、、、
※ ENIAC は、第二次世界大戦の終結直後にアメリカで誕生した、世界初のプログラム内蔵式コンピュータ(当時トランジスタはありませんから真空管で構築されている巨大な機械)です。
「コンピューター誕生の歴史に隠れた6人の女性プログラマー」キャシー・クレイマン(著) 羽田 昭裕 (翻訳) | Amazon
300ページを超える本ですが、(当社比)爆速で読了。ノンフィクションとは思えないぐらい筆致がドラマチック。 序盤で6人の女性が、ENIACに関わるまでの半生が順に記述されますが、その各章の書き出しがカッコいい。 ENIACの開発には男女含めて多くの人が関わっていて、ほぼ全員が(ENIAC6だけでなく)この序盤に登場してくる。研究者や軍の関係者など、すごいやつもダメな奴も順番に。なんだか、プロジェクトX的な映像ドキュメンタリーの導入部を見ているような感覚を覚えた。とにかくかっこいい(語彙)。
1980年代に大学でコンピュータ科学を専攻し、ジャーナリスト志望の女子大生である著者キャシークレイマンは、ENIACが開発された頃の写真に、数人の女性が写っているが、彼女らの素性はおろか名前さえも全くわからないことに違和感を覚えます。当時を知る人達に聞いても、お披露目のために用意されたモデルではないか?という回答しか得られない。彼女らの姿は、巨大で異様なENIACという機械を完全に把握し自信に満ちた様子。単に報道のために用意された飾りには見えないことに違和感を覚え「彼女らは誰なのか、どのような経緯でENIACに関わったのか、そして、彼女らは、その後どのような人生を送ったのか」を解き明かしている本です。
さらに、ENIACそのものが誕生するまでの技術的・専門的な経緯や状況の描写も豊富に含んでいます。とても読み応えがある。 その内容は、大学の卒業論文として提出したものをベースにしているが、社会人になった後にも、それらの情報が世の中から失われてしまっていることに焦燥感を覚え、当時の関係者らに取材を重ねて描き下ろしています。
現在のコンピュータ・プログラマー業界で普通に使用されている開発手法や、いわゆる「あるある」などが、彼女ら6人の世界最初のプログラマーによって生み出されていたり、現在でも使用されているプログラミング言語の誕生に関わっている人がいたりして、とにかく同業種に身を置く人として、非常にエモい。
様々な困難を克服し、ときに喜び、互いの人生の節目には祝福の杯を交わし、世界初のプログラム内蔵型コンピュータが誕生し、その後の歴史がドラスティックに変わったさまが、ドラマチックに描かれています。
歴史的価値も高いように思います。
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