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2015.11.01

「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんの「初文庫オリジナル短編集」。書店の奥で平積みでした。

概要

7つの「ちょっと不思議な短編」で構成されています。

オビに書かれた「書き下ろし短編収録」を見て手に取った。その上には、大きな文字で「初文庫オリジナル短編集」とあったが、こちらは何故か響かなかった。ほとんど文庫本しか読まないからかな。

  1. 「浜田青年ホントスカ」
  2. 「ギア」
  3. 「二月下旬から三月上旬」
  4. 「if」
  5. 「一人では無理がある」
  6. 「彗星さんたち」
  7. 「後ろの声がうるさい」

上記に加えて、あとがき的に「15年を振り返って」というインタビューが掲載されています。

書き下ろしは最後の「後ろの声がうるさい」。これは、この本のまとめ的な役割かな。伊坂さんは「文庫のおくりもの」と表現されています。

「浜田青年ホントスカ」

「浜田青年ホントスカ」は、青年が妙な街の変なスーパーを訪れて、おかしな体験をしているところから始まるお話。

なぜか導入部が、読みにくくて、数ページ読み返して状況が理解できた。日帰り出張の電車の中で読み始めたので、普段の読書の状況とは違っていたからかもしれない。文章的に云々ということではなさそうです。

全体的な雰囲気は「オーデュボンの祈り」と「ラッシュライフ」と「グラスホッパー」の3つを足して(短編なので)30で割ったような感じ。あくまでも雰囲気だけですが。

という風に、「伊坂ワールド全開」に思えていましたが、あるポイントでの急展開後、突然、そして曖昧に終わった印象があります。「え?これで終わり?」みたいな。

「ギア」

人それぞれかもしれませんが、夜に、あまり乗客がいない路線バスに乗ると、少し憂鬱になりませんか。

外は暗くて、車内は、やけに青白い蛍光灯の明かりが強く、吊革の揺れに応じて明滅しているように感じられる。座席は濃い色だけど古びた安っぽいくベルベット。ラミネート加工されたみたいなレースのクロスが掛けられていて、その白々しい白色は「座席は衛生的ではありませんよ」と告発しているような、そういう気持ち悪さ。後ろの窓には蛾がいそうです。

そんな陰鬱さのあるバスの中で展開する狂気的かつシュールなスピード感あふれるお話。ショートSFホラーとでも言うのかな。

筒井康隆さんのドタバタ&ショートSF的な空気を感じた。最初「急流」を思い出しましたが「農協月へ行く」のドタバタ感もありました。あと「夢の木坂分岐点」の不気味さも持っているような気がします。

「二月下旬から三月上旬」

いや、こっちの方が「夢の木坂分岐点」と似た雰囲気か。

ちょっと、自分にとってはムズカシイ感じがしました。深いような、そうでもないような。

「if」

あ、これもバスの話ですね。でも「ギア」とは全く違います。 いつものバスに乗ったら事件発生。主題は「後悔」なので明るさは無いけど、ちょっといい話です。 アイデアに感心。

「一人では無理がある」

サンタクロースのお話です。これは楽しい。「伊坂ワールド」全開です。

キャラの立ち具合はちょっと弱めかな。でも、続編があってもよいと思います。

「彗星さんたち」

東京駅で新幹線の車内清掃のスタッフの仕事中のちょっといい話。

「普通」から少し外れて、目をそらしたくなるような話題が少しだけ出てくるのも、最後に「ああ、よかったな」と救われるのも「伊坂ワールド」。

「後ろの声がうるさい」

この文庫のために書き下ろされた作品です。上の6つの登場人物が全員出てくるのかな。 繰り返しになりますが、伊坂さんはこの作品を「文庫のおくりもの」と表現されています。

少し「マリアビートル」的と思いましたけど、単に舞台が新幹線だからかな。 ミステリアスで、いい話。

まとめ

Amazonのレビューでも意見が分かれていますけど、確かに「分かりにくい」、「スッキリしない」話が多いような気がします。でも全部ではなくて、後半はかなり「伊坂ワールド」色が強いと思いました。

第一線のクリエイターの人たちは、一度ヒットした作品が作り出している枠の先端から、さらに前へ飛び出そうと、常に試行錯誤をしていらっしゃるのではないでしょうかね。そんな中で、従来の作品が好きな人からすれば「違うなあ」というものも出てくるのではないかと思います。

私は、「ギア」と「二月下旬から三月上旬」には、強烈に「筒井康隆的」狂気とスピード感(速いのも遅いのも)を感じました(直前に「旅のラゴス」を読んでいたというのは、おそらく関係ないと思います)。

こんな「あ、これは、あれだ」みたいなのって単純に楽しいですね。

私は、上原ひろみさんのピアノを聞いていて、「うわ、この部分、キース・エマーソンが憑依してるっ!」などと、うれしい気分になることがあるのですが、それと同じだな。


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» 「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎 [粋な提案]
助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の“もし、あの時…”を描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。 連作でなく既存の長編および短編小説と...... [続きを読む]

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